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瞼を二、三度閉じては開く。そこでようやく、私が見ているのは瞼の裏ではなく、一寸先も見えない暗闇だってわかった。上下左右も何もない。私はそこでふわふわと浮かんでいた。思考も感情もまるで動かず、ただひたすらにぼーっとして。 そこにひょっこり少年が現れた。どこから来たのかわからない。ただ両手いっぱいの蝋燭を抱え、腰にチャッカマンをぶら下げている。 あれ、迷子かいと聖母みたいに微笑んだ。瞳の奥で小さな白い球体が揺れている。なんて綺麗な目なんだろう。地平線の先も、宇宙の果ても、全部見渡せそうなくらい澄んでいる。 君はここにいるべきではないね。不意にそんなことを言って、おいでと手招きをした。 「一仕事したら、帰してあげるよ。」 少年はテクテク歩いていった。迷わないで一直線に。鼻歌でも歌いそうな軽い足取り。ただ大小様々な蝋燭を、後生大事に抱えている。長いものは一メートル近く、短いものは一センチもない。私はそれについていく。いつまで経っても黒一色で、なんだか退屈してしまった。すると行き場を求めて思考が回転し始めて、彼を質問責めにしてしまった。 「あなたは誰?」 「僕は命の配達人。神様みたいなものさ。だから僕のことはそう呼べばいい。」 「ここはどこ?」 「通路さ。場所さえ知っていればどこにだって行ける。あの世にも、現世にも。今向かっている、輪廻の流れのそばにだって。」 「そこで何をするの?その蝋燭たちはなに?」 「火をつけるんだよ。火は命、この蝋燭は人生。この蝋燭に火が灯る時、人、虫、動物。新たな生きとし生けるものが誕生するのさ。」
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