89人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
☆
――レオンハルト・ヘルマン。
それは、まだ物心ついたばかりの幼い時分から剣を握り、齢12歳にして王国より勇者認定を受けた男の名前。同時に、光の民たる人族の希望の象徴にして、闇の眷族たる魔族達の畏怖の対象。
ほとんど白に近い金髪を持ち、透き通るような青い瞳の美丈夫である彼は、日夜人族の平和と安寧のために奔走し、労をいとわずに尽力する若き人徳者である。
そして、先日17歳の誕生日を迎えたばかりのレオンハルトは、まだその面差しにいくらかのあどけなさを残しつつも、既に数多の戦場を駆け回り、対峙する魔族やモンスターの尽くを切り伏せ、屍山血河を築いてきた凄腕の武人でもあった。
そんな彼の元に、国王直々の依頼、いわゆる『クエスト』が下されたのは、ちょうど一週間前のことである。
『魔王領近辺の樹海の奥深くに、新たにダンジョンが出現したとの報あり。勇者レオンハルト・ヘルマンは、直ちに詳細の確認、及び調査結果の報告と処理を行われたし』
魔王領への最前線基地からもたらされた情報に基づいたその勅令によって、王都を発ったレオンハルトは現在、問題となっている樹海の深部へと歩みを進めていた。
最初のコメントを投稿しよう!