勇者レオンハルト

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 単体としての戦闘力は決して高い訳では無いものの、数十匹ものグリューンヴォルフ達による巧みな陽動(ようどう)撹乱(かくらん)、そして息もつかせぬ苛烈なヒットアンドアウェイ戦法によって、無念にも命を落とす冒険者や新米の警備隊員は毎年後を絶たない。  標的と定めた相手に対し、極めて合理的に、驚くほど戦略的に、どこまでも狡猾に、攻め立て、追い詰め、殺して、喰らう。本能のままに行動するモンスターでありながら、どこか機械的な側面を持ち合わせ、人々に恐れられる彼らは、まさに一筋縄ではいかない樹海の狩猟者(ハンター)だ。  だが……。  『グオオオオ――』  「ッラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」  ――不意に、レオンハルトを守る警備隊の1人……隊長のテオドールが、樹海全体を震わせるほどの怒号を打ち上げた。  地の底から響くようなグリューンヴォルフ達の咆哮を掻き消し、声だけで彼ら全員を()じ伏せてしまえそうな覇気の籠った雄叫びを上げた警備隊長は、そのまま得物のバスタードソードを(ひらめ)かせ、身を竦ませた深緑狼数匹を(ほうむ)った。  『ッ!?』  『グルルァ……ッ』
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