89人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
『ア、アオーンッ!?』
『キャン……ッ!?』
……先ほど、地の底から響くような咆哮と共に、意気揚々と奇襲を仕掛けて来たグリューンヴォルフ達。
だが、テオドール達を殺すため、生きていく糧を得るために彼らの前に身を躍らせた深緑狼の群れは、気付けば既にその半数が血溜まりに沈んでいた。
『グゥ、グルルル!!』
(『クソが! どうしてこんな事に……』って顔してんな、あの野郎)
自らの気迫に圧され、咄嗟に逃げ出そうとしたグリューンヴォルフ2体を葬りながら、脳裏で彼らのボスについての所見を述べるテオドール。
闘志を剥き出しにし、警備隊の誰よりも勇猛に剣を振るう隊長は……けれど、その実クールな胸の内で、徐々にその表情を絶望へと染めていく敵将へと冷めた回答を送った。
(……んなモン決まってんだろうが。自分達の“命を繋ぐためだけ”に『殺す』テメエらと、“テメエの命より重い国を守るため”に『殺す』俺達とじゃ、覚悟も、気合いも、闘志も、意地も、何もかもが段違いなんだよ)
格が違う。
たった1つのシンプルな答えを眼差しに灯し、テオドールが3度目の怒号を打ち上げた瞬間、ついに鼻っ柱をへし折られたグリューンヴォルフの群れは、情けない鳴き声と共に身を翻し、一目散に撤退していった。
最初のコメントを投稿しよう!