勇者レオンハルト

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 そして更に、数人のパーティーメンバーの中でダンジョン攻略時の役割決め……例えば、迷宮を進む際の露払(つゆはら)いの係りとして斥候役を。また、モンスターやガーディアンに襲われた際、剣や(つえ)を手に取り、本格的な戦いをこなすための戦闘時の役割分担を行っておくなど、安全マージンを確保しつつ堅実に歩みを進めて行くのがダンジョン攻略の常套手段(じょうとうしゅだん)だ。  まして、今回向かう先は新たに出現したばかりのダンジョン。いったいどんな危険が飛び出して来るのか、何が起こるのか全く予測不可能な人外魔境である。  もちろん、テオドールはレオンハルトの実力をある程度把握しているし、決して彼を(あなど)っているワケではない。  ……だから、その上で……。レオンハルトを凄腕の勇者と認識した上で、あえて最終確認を取ったのだ。  『本当にお前1人で平気なのか?』、と……。  ……少しの間、レオンハルトは考えるような素振りを見せた。男にしては長めの睫毛(まつげ)を伏せ、テオドールの申し出を何度も反芻(はんすう)する。  ……やがて、若き勇者は口を開いた。  「ありがとうございます、テオドールさん。……ですが、やはりダンジョン探索は私1人で行います」
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