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『キュキュウ!』
レオンハルトと目が合った瞬間、アルミラージは可愛らしい鳴き声を上げると共に、小さな尻尾を振って走り始めた。
……どうやら、もう一度レオンハルトをあの地の底まで案内してくれるらしい。
「……」
一見すると……いや、どう考えてもそれは見え見えの罠だったが……。
……しかし、レオンハルトの逡巡は一瞬だった。
ダンッッッ!!
――次の瞬間、一際力強い踏み込みと共にレオンハルトは一気に加速。驚異的な速度でアルミラージに肉薄した。
『キュウ!?』
1度目とは違い瞬く間に距離を詰めて来た追跡者に、脚力自慢のウサギのモンスターは驚倒し、すぐさま泡を食ったように自身も加速。
まるで地中に張り巡らされた大樹の根のように、複雑に入り組み、絡み合った『樹海のダンジョン』内を、自分の庭のごとくにアルミラージは自在に疾駆するが……。
……しかし、そんな白ウサギの魔物の背後から、レオンハルトも全く同じ速度で……。
……いや、違う。
既に息を切らし、背後を気にしながら慌てて走るアルミラージよりも、呼吸1つ乱す事無く、冷静に追走するレオンハルトの方が少し速かった。
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