戦乙女はじめました3

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       ☆  『キュウッ!? キュキュキュウッ!?』  ……甲高い鳴き声を上げながら、薄暗く(こけ)むしたダンジョン内をアルミラージが駆けていく。  決して広いとは言えないダンジョンの通路。その通路内を、右に左に飛び()ねて、時には壁を走り、天井まで足場にして、縦横無尽に、角の生えた白ウサギのモンスターは逃げ続ける。  ……だが、彼がどれほど逃げようと、走り続けようとも、“刺客(しかく)”はどこまでも追いかける。  「【焼き焦がせ、火炎の(つぶて)】」  背中越しに都合5度目となる呪文の詠唱を聞きながら、アルミラージは焼け焦げて細い煙を上げる小さな尻尾を大きく揺らし、至近距離から放たれた炎の散弾を必死に避ける。  まるで一条の風のように、あるいは白い稲妻のように、自由自在に『樹海のダンジョン』を跳ね回る……そんな白ウサギのモンスターを相手に、吸血鬼(ヴァンパイア)の因子を植え付けられた“刺客”、レオンハルトは、標的を1枚も2枚も上回る敏捷性(びんしょうせい)を駆使し、じわりじわりと逃げる魔物を追い詰めていく。
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