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僅かに苛立ちの混じった言葉と共に、大柄な男が軽く腰を落とした……次の瞬間。
ドゴッッッ!!
……“一瞬にしてレオンハルトとの距離を詰めた”男の拳が、棒立ちの勇者の腹に深々と突き刺さった。
「かッ――!?」
途方も無い衝撃に体を貫かれ、レオンハルトの体が折れ曲がる。
強制的に体内の空気を吐き出させられ、吐き気すら込み上げてくる……そんな中で、
(くそ……ッ!?)
弧を描いて吹き飛びながら……それでも、どうにか着地と同時に受け身を行い、レオンハルトは素早く臨戦態勢に入った。
「ほう?」
眦を決して睨みつけて来るレオンハルトに、大柄な男が感心したような声を漏らす中、
「……人に物を尋ねる前に、まず自分のことを話したらどうだ? お前こそいったい何者だ。ここで何をしている」
血溜まりに沈むジャンピエールを気にしつつ、レオンハルトは努めて冷静に口を開いた。
すると、
「……貴様、俺のことを知らないのか?」
次の瞬間、なぜか大柄な男は拍子抜けした表情と共に、まじまじとレオンハルトを見つめて来る。
あごに手を当て、眉間にシワを寄せながら、じろじろと風変わりな少女の体を頭のてっぺんから足の先まで見回しつつ、「孤児?」とか「忌み子?」とか「浮浪者?」とか、大変失礼な独り言を漏らした後、
「……まぁいい。知らないのなら教えてやろう」
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