戦乙女はじめました3

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 軽く胸を張り、金色の瞳でレオンハルトを見下ろしながら、男はこう名乗った。  「俺の名はトイフェル。トイフェル・コルネリウス・フォン・べリアル。魔王国宮廷騎士団団長にして、現魔王ベルゼビュートの孫だ」  「トイフェル……魔王の孫……」  僅かに目を伏せ、レオンハルトは相手の言葉を反芻(はんすう)する。  『トイフェル』、その名前には聞き覚えがあった。  魔王国の宮廷騎士団を統括する男の名前にして、魔王ベルゼビュートの血族。  ……もしも大男の言葉が真実ならば、確かにレオンハルトが事前に知り及んでいた情報と符合する。  それに……。  「さぁ、俺は名乗ってやったぞ。次はお前の番だ」  横柄な物言いと共に、腕を組んであごをしゃくる大男。  恵まれた体躯を揺らしつつ、1歩前へと進み出た男が身に着けている、その(よろい)の胸元には……。  (あれは、『逆十字』の紋章……魔王軍の証……!)  そう。  男が身に着けている鎧には、逆さになった十字架の意匠……魔王国の軍人のみに許される印が施されていた。  ……どうやら、あの男の……いや、トイフェルの言葉は真実らしい。  レオンハルトは軽く息を吸い込みつつ、相手の質問に答える。  「……俺はレオンハルト。レオンハルト・ヘルマン」
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