戦乙女はじめました3

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 「レオンハルト……?」  直後にトイフェルの片眉が吊り上がる。  彫りの深い精悍(せいかん)な顔に、一瞬心に何か引っかかるような気配を滲ませ……そして、  「……クッ、ふはは。そうか。魔族の、それも見たところ純血ではない娘の名に『レオンハルト』か……」  次の瞬間、トイフェルはにやりと口の端を(ゆが)ませ、豪気な笑みを浮かべた。  「なるほど、大した皮肉だ。半魔の娘に、男の……それも人族の勇者の名とは。いや、確かにそれならばその襤褸切(ぼろき)れ1枚の服装も、荒んだ表情も言葉遣いにも納得がいく。今までさぞ苦労したのだろう?」  「……トイフェル。お前は、ここでいったい何をしている?」  憐憫(れんびん)の滲んだトイフェルの言葉をあえて無視しつつ、レオンハルトは質問する。  今までよりも僅かに鋭さを増したレオンハルトの言葉に、魔族の騎士は端的に答える。  「裏切り者の粛清(しゅくせい)だ」  「何……?」  トイフェルの言葉にレオンハルトははっと目を見開いた。  どきりと心臓が跳ねるのを感じて、それを気取られないよう平静を装いつつ、そっと視線だけを血溜まりに沈むジャンピエールへと移動させる。
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