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「ッ――」
殴られたトイフェルは呻き1つ上げられないまま、レオンハルトの拳打によって頭を仰け反らせ、そのまま5歩、6歩ほど後退させられる。
「……!?」
何が起きたか分からない。そんな表情と共に、思わず金色の瞳を見開いた魔王国宮廷騎士団団長は……次の瞬間、再び強烈な衝撃に襲われる。
「はぁッ!!」
裂帛の気合と共に、レオンハルトは渾身の掌底をトイフェルのみぞおちに叩き込んだ。
ズシンッッッ!!
……それは、無骨な鎧の上からの一撃。しかし、容易く大木をへし折る勇者の攻撃は、鍛え上げられたトイフェルの体を内側から破壊する。
「ぐ、う……ッ」
砕けそうなほどに歯を噛み締めつつ、どうにか踏み留まろうと踏ん張ったトイフェルは、そのまま腰を落とした体勢で滑るように数メトルほど後退させられた。
「くそッ」
(なんだ? いったい何が起こっている……ッ?)
物凄まじいレオンハルトの掌底によって肋骨を何本か持っていかれながらも、気迫で体勢を立て直し、トイフェルが改めて正面に向き直った……。
「やあッ!!」
――瞬間、魔族の騎士は掛け声と共に上段蹴りを放つレオンハルトの姿を視界に捉えた。
しかも……。
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