戦乙女はじめました3

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 ほどなくしてほとんどの詠唱を完了させたレオンハルトは、頬を伝う涙と共に、自身が使える最強の炎系魔法最後の一節を口にした。  「くたばれ……【ゾンネ・ ヴートゥアンファル】」  ――瞬間、ジャンピエールにかざしていたレオンハルトの手の平から、莫大(ばくだい)な量の炎が吹き上がった。  それは、どこまでも紅く、熱く、まさに業火を思わせるほどの、一切の呵責(かしゃく)の無い一撃。  あたかもレオンハルトの手の平から新たに太陽が生まれ落ちたかのような……そんな錯覚を抱くほどに強烈な炎系殲滅魔法は、瞬く間にジャンピエールの全身を飲み込んで、周囲一帯を火の海と化した。  「……これで、終わりだ……っ」  涙に濡れた言葉と共に、更に、更に魔法の出力を上げていくレオンハルト。  逆巻く炎は()とされた勇者の内心を代弁するかのごとく、荒々しく空間をのたうち回り、地面を、壁を、そしてドーム状の天井まで焼き焦がす。  魔法の発動から約3秒にして、常人ならば数瞬で炭化してしまう死の世界を創り出したレオンハルトは、しばらくの間、その灼熱(しゃくねつ)の世界の支配者として君臨(くんりん)し続けていたが……。  しかし、  「く……ッ」  やがて魔力の枯渇(こかつ)によって、ついに彼は魔法を維持できなくなった。
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