戦乙女はじめました3

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 「危ない所だったよ。お前の蹴りで吹き飛ばされた後、数瞬とはいえ気絶してしまってね。意識を取り戻した後、咄嗟に万能薬(エリクシア)を服用して、すぐさま土系の防護魔法で身を守らなければ死んでいたところだ」  ははは、と、トイフェルは精悍(せいかん)な顔を(ほころ)ばせ、柔和に微笑みながら……。  ドゴォッッッ!!!  ――次の瞬間、(いわお)のような拳でレオンハルトの顔を殴り飛ばした。  「ッ――」  それはまるで、戦鎚(せんつい)による殴打のごとき一撃。  常人ならば頭蓋骨が砕けるほどの衝撃に、レオンハルトの意識が白く霞む。  「あ……ぐ……ッ」  ろくに悲鳴も上げられないまま、勇者の華奢(きゃしゃ)な体は紙クズのように吹き飛ばされ、不格好に地べたを転がった。  「はぁ……はぁ……はぁ……っ」  (くそ……っ)  頬に燃えるような痛みを感じながら、激痛にあえぐレオンハルト。  反射的に起き上がろうとするものの、彼の体はもう言うことを聞かない。  「……全く、一騎当万だか何だか知らんが、人族の小僧がよくもここまで手こずらせてくれたものだ」  (なぶ)るような口調と共に、ゆっくりと倒れ伏せる勇者へと歩み寄るトイフェル。  小さな真珠のような歯を食い縛り、真っ直ぐに睨みつけて来るレオンハルトを再び吊り上げた彼は、今度は破れた服から柔肌を覗かせる相手の腹に、渾身の掌底をぶち込んだ。  ズシンッッッ!!
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