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パッと、不意にトイフェルがレオンハルトから手を放し……。
……直後、一瞬の浮遊感を経て、満身創痍の勇者はなす術なく地面に倒れ込んでしまう。
「うっ……」
背中に走る痛みに呻きつつ、それでも、すぐさまレオンハルトは両の瞳に力を込めて、ぼやけて滲む視界の向こうに改めて相手の顔を捉えようとした……その時。
ガッ……！
「んむ……っ！？」
再び伸ばされたトイフェルの手がレオンハルトの口元を覆い……そして、そのままズタボロの勇者は縫い止めたように地面へと押さえ付けられてしまった。
「ん、んん……っ！」
目を剥き、必死に首を振って、なけなしの力で抵抗するレオンハルト。
そんな彼に、どこまでも冷徹な、それでいて嘲笑うような響きを伴ったトイフェルの言葉が放られる。
「……小娘。貴様は人族の歪んだ正義を振りかざし、数多の魔族をその手に掛け、我らが王に仇なした。……これだけの罪を犯した罪人を、“ただ殺すだけ”で済ますはずがないだろう」
セリフと共に、ゆっくり、ゆっくりと口の端を吊り上げていくトイフェルに、思わずレオンハルトは息を呑んだ。
「ッ……」
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