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胸を過った不安のせいで、いつになく表情が硬くなってしまうのを感じながら……しかし、長年最前線で魔族達の侵攻を食い止めて来た豪傑は、湧き上がる負のイメージを持ち前の胆力で捩じ伏せ、勇敢に足を進めて行く。
……今回、勇者の護衛として同行させている数十名の隊員の命を背負い、そして、我らが王国の希望たる勇者レオンハルトに力添えをするために、待ち構えている難敵へと向け、テオドールは邁進するのだった。
☆
樹海行軍を再開させてから、およそ3分後。
“それ”は唐突にテオドール達の目の前に姿を現した。
『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
……耳を劈く大音声と共に、まるで山のような威圧感を伴って現れたそれは……それは……。
(……なんだ、コイツは……?)
……それは、長年魔王軍による侵略から人族の領域を守り続けてきた歴戦の兵士ですら、全くの初見となるモンスターで……。
……同時に、テオドールが過去に対峙したどのモンスターよりも巨大な力を感じさせた。
『ヴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
モンスターは赤黒く淀んだ双眸でテオドール達を睥睨しながら、鋼色の巨体を揺らし、再び咆哮を上げる。
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