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体中が粟立つほどの嫌悪感にさらされながら……それでも、レオンハルトは目の前の男を打ちのめすどころか、もう反撃1つまともに出来ない。
(くそッ! ……くそっ)
はらはらと涙を流しながら……やがて、ついに耐え切れなくなったようにレオンハルトはトイフェルから顔を背け、ぎゅっと目を瞑ると、震える腕で胸を抱きしめた。
……まるで怯えた子供のように、呪いで小さくなった体を更に小さく縮こまらせて、ぎゅっと唇を引き結ぶ。
非力でか弱いその姿には、既に歴戦の勇者の面影はどこにも無かった。
「おやおやおや……。あの勇猛果敢と謳われた人族の英雄、レオンハルト・ヘルマンが、これはこれはずいぶんとしおらしくなったものだな……?」
もはや完全に萎縮して、ぽろぽろと大粒の涙を流すレオンハルトに、トイフェルはゆっくりと、ねぶるような声音で囁きかける。
控えめな胸を上下させ、浅く短い呼吸を繰り返す……そんな相手に更に追い打ちを掛けるように、魔族の騎士は言葉を重ねた。
「クククッ。どうした? 悔しくないのか? レオンハルト。何か言い返したらどうだ。…………男だろう? 貴様は」
セリフと共に、トイフェルは再びレオンハルトに腕を伸ばし……。
……そして、節くれだった大きな手で相手の細い両腕をまとめて掴むと、強引に胸元から引き剥がした。
「っ……」
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