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やめろ。放せ……っ
「んっ! んん……っ」
細い体をよじり、レオンハルトは力の入らない四肢で必死に抵抗するが、トイフェルの体はびくともしない。
それどころか、レオンハルトが必死になってもがくほど、嘲笑うかのように魔族の騎士は殊更強い力で彼を押さえつけ、完全に勇者の動きを封じ込めてしまう。
この、野郎……!
口を塞がれているために悪態の1つもつけず、また両手を封じられているために露出した胸部を隠すことも出来ない。
あまりの悔しさと無力感に苛まれ、すんすんとしゃくり上げながら……それでもなお、大きな青い瞳に怒りを宿し、真っ直ぐに敵を睨みつけるレオンハルトに、
「なかなか頑な勇者様だな。……だが」
にやりと口の端を吊り上げながら、トイフェルはゆっくりとレオンハルトに顔を近づけていく。
そして、互いの息がかかりそうなほどにまで近づいて……しかし、それでも目を逸らさない相手に、魔族の騎士は下卑た笑みを深めながら、
「“この程度”、ただの戯れに過ぎん。……分かっているな? 貴様にはこれから、死ぬよりもつらい思いをしてもらうことになる」
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