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「! コイツ……ッ。ええい、おとなしくしていろッ」
「んッ……んん!」
押さえつけられた腕に力を込めて、再びトイフェルに抗うレオンハルト。
一度は諦めの色に沈んだ瞳に力を込め、身を焦がすほどの羞恥の炎を捩じ伏せながら……少しずつ、少しずつ彼はトイフェルの腕を押し返し始める。
「貴様、まだこんな力を……ッ」
再び抵抗し始めたレオンハルトに、トイフェルの顔が苦々しげに歪む。
(くそッ。なぜだ……! なぜ、まだ立ち上がれるッ)
肉体的にも精神的にも、既にこの小娘は完膚なきまでに叩きのめしたはずだ。
例え勇者といえど、相手はまだろくに酒も飲めないような年の子供。そんな子供が、一度は圧倒した敵国の騎士に弄ばれ、辱められ、心を抉られ……あまつさえ操まで汚されようとしていたのだ。
それこそ幼子のように泣き喚くか、立場も体裁もかなぐり捨てて涙ながらに許しを請うならばまだしも、この期に及んでまだ自分に逆らい続けるなど、トイフェルには全くもって及びのつかないことであった。
だが……。
「んッ! んん……ッ!!」
いくらレオンハルトが戦意を取り戻そうと、依然彼が満身創痍であることには変わりない。
自らの優位性は揺らがない。そうトイフェルが胸の内で口にした……直後。
ヒュンッッッ!
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