戦乙女はじめました3

32/47
前へ
/282ページ
次へ
 「それよりもトイフェルくん……。キミ、いいのかな? 勇者ちゃんからよそ見なんかしてさ」  「あぁ……?」  ジャンピエールの言葉に片眉を吊り上げ、トイフェルが怪訝(けげん)そうな表情を浮かべた……。  ――その直後。  ドゴッッッ!!  「――ッ!?」  不意に、トイフェルは腹部に(えぐ)るような衝撃を受け、苦悶の表情と共に吹き飛ばされた。  (な……なんだ!?)  背中から地へと叩き付けられ、無様に転げ回りつつも、素早く体勢を立て直した魔族の騎士は目の前へと視線を向け……。  ……そして次の瞬間、彼は凄まじい勢いで自らの顔に迫り来る小さな握り拳を捉えた。  「くッ!?」  咄嗟(とっさ)に息を呑み込むトイフェル。……しかし、状況を理解したところで彼の体は反応など出来ず、一瞬の後に魔族の騎士の顔面には子供のように小さな、けれど巨岩さえ粉々に粉砕するほどの拳が突き刺さった。  グシャッッッ!!  「あが……ッ!?」  強制的に首を跳ね上げられ、トイフェルの視界がぐるりと回る。  鼻から脳天へと衝撃が突き抜け、吐き気すら催した。  (く、くそ……クソがッ!)  チカチカと光の明滅する視界の中、遅れてやってきた激痛に顔をしかめながら……それでも、トイフェルは歯を食い縛って正面を見据えた。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加