勇者レオンハルト

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       ☆  『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』  咆哮(ほうこう)1つで周囲全ての木々をざわめかせながら、震動雷電(しんどうらいでん)、シュタールベーアは突進してきた。  鋼色の剛毛を逆立たせ、大きな体躯を武器に肉薄してくるその様は、まさに大波のごとく押し寄せる鉄塊そのもの。  しかし、  「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」  そんなシュタールベーアの威圧感を物ともせず、歴戦の警備隊長、テオドールは雄叫びを上げる。  自身の倍ほどもあるモンスターの殺意を全身に受けながら、まるで(ひる)む事無く前進する。  『ヴオオアアアアア!!』  次の瞬間、テオドールを自身の間合いに捉えたシュタールベーアが、死神の大鎌のごとき鉤爪を振りかぶった。  力任せの大振りの一撃。  ……けれど、強力なモンスターの膂力(りょりょく)によって打ち出されたそれは、容易く岩を砕き、巨木を()ぎ倒すほどの威力を内包している。  まともにくらえば、致命傷は避けられない。  だが、  「ゼアッ!!」  相手の爪が迫る中、テオドールは気合いと共にバスタードソードで漆黒の爪を受け流しつつ、咄嗟(とっさ)に【身体強化】を施した右足で上段蹴りを叩き込んだ。
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