89人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
☆
『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
咆哮1つで周囲全ての木々をざわめかせながら、震動雷電、シュタールベーアは突進してきた。
鋼色の剛毛を逆立たせ、大きな体躯を武器に肉薄してくるその様は、まさに大波のごとく押し寄せる鉄塊そのもの。
しかし、
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
そんなシュタールベーアの威圧感を物ともせず、歴戦の警備隊長、テオドールは雄叫びを上げる。
自身の倍ほどもあるモンスターの殺意を全身に受けながら、まるで怯む事無く前進する。
『ヴオオアアアアア!!』
次の瞬間、テオドールを自身の間合いに捉えたシュタールベーアが、死神の大鎌のごとき鉤爪を振りかぶった。
力任せの大振りの一撃。
……けれど、強力なモンスターの膂力によって打ち出されたそれは、容易く岩を砕き、巨木を薙ぎ倒すほどの威力を内包している。
まともにくらえば、致命傷は避けられない。
だが、
「ゼアッ!!」
相手の爪が迫る中、テオドールは気合いと共にバスタードソードで漆黒の爪を受け流しつつ、咄嗟に【身体強化】を施した右足で上段蹴りを叩き込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!