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『ヴアア……ッ!!』
苦悶の呻きと共に、堪らずに1歩後退させられるシュタールベーア。しかし、次の瞬間には再び牙を剥き、そして嵐のように丸太のような両腕を振り回し始めた。
自身の重量と膂力を武器に、回避の難しい攻撃方法を選んで再び突進してくる鋼の大熊に、テオドールは冷静に後退を選択する。
『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「ッ!」
物凄まじいシュタールベーアの猛攻に、テオドールは頬に裂傷を負い、そして鎧越しに戦鎚による打撃のような、途方も無い衝撃をもらいつつ……それでも、
「今だ! やれッ!!」
口から血を吐きながら、歴戦の警備隊長は隊員達に合図を送る。
直後、シュタールベーアを中心に、四方八方から緑色の魔力光……風属性の輝きが瞬いて、
『ウ、グッ!? グアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
――数秒後、テオドールの部下達による魔法……風系刺突魔法、【ヴィント・シュピース】の餌食となった鋼の大熊は、全身から血を噴き出しながら膝を付いた。
『ヴ、ヴウウ……ッ!!』
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