89人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
深手を負ってなお、赤黒く淀んだ瞳に滴るような殺意を滲ませ、テオドール達を睥睨するシュタールベーア。
鋭い牙を剥き出しにしながら、微塵も衰えない闘志を全身から立ち上らせ、今再び彼が咆哮と共に獲物達へと躍りかかろうとした……その時、
『ヴオオオオオオオオオ――』
「はぁッ!!」
『ガ……ッ!?』
血の混じった涎を吐き散らしつつ、シュタールベーアが大口を開けたその瞬間、鋭い踏み込みによって低い体勢から一気に前進したテオドールが、渾身の力で得物のバスタードソードを敵の口腔へと突き立てた。
(終わりだ、クマ公……!)
ブラウンの瞳にありったけの殺意を込めて、鬼の警備隊長が大きく目を見開いた鋼の大熊へと、更に強く得物をねじ込んだ……。
……その数瞬後、まるで脈打つように、シュタールベーアはその巨体を大きく跳ねさせ、赤黒い瞳孔を散瞳させて……そして、永遠の眠りへと落ちて行った。
「はぁ……はぁ……」
事切れたシュタールベーアからバスタードソードを引き抜きながら、テオドールは何度も肩を上下させる。
最初のコメントを投稿しよう!