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(ッ、こいつら……!!)
いったいその巨体でどうやって隠れていたのか、それぞれ“樹上で息を潜め”、“地中に身を隠し”、そして“岩に擬態していた”3体の鋼の大熊は、漆黒の鉤爪をもって肉薄してくる。
(クソッ……!)
やられた。
ただでさえ厄介な大型モンスターによる“戦略的な動き”に、テオドールの顔に苦虫を噛み潰したような色が滲む。
いくらなんでも、これは防ぎきれない。
自分はまだしも、隊員の何人かは確実に彼らの攻撃に捉えられ、戦闘不能に追い込まれるだろう。
先のシュタールベーア戦を経験したテオドールには、数秒後に訪れるであろう未来の光景がありありと予測出来た。
だから……。
――だから次の瞬間、3方向から襲って来たはずの鋼の大熊達が、“まるで何かに弾かれるようにして、一斉に不自然な挙動で元来た方へと吹き飛ぶ様”を認めた時、テオドールの脳裏には空白が生まれた。
(……は?)
なんだこれ。
鳴き声1つ上げられないまま、全身を樹木や地面にぶつけて転げ回るシュタールベーア達。
出来損ないの人形劇よろしく、いっそ滑稽なほどの勢いで遠ざかって行く彼らを前に、武器を構えたまま呆然としてしまうのは……やはり、隊長のテオドールだけではなかった。
「え、今……」
「あれ? なんで……」
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