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2体そろって空を仰ぎ、力強い咆哮を打ち上げた直後、シュタールベーアの体から赤褐色のオーラが立ち上り始めた。
「あの光、まさか……」
土属性の魔力光と同じ色の光に包まれるモンスター達に、すっかり蚊帳の外のテオドールが目を眇める。
「隊長、知ってるんですか? あの光の事……」
部下の1人の問い掛けに、鬼の警備隊長は「ああ」と短く答えつつ、
「あれは、一部のモンスターだけが保有する特殊スキル、【魂魄変換】の光だ。【魂魄変換】ってのは、その名の通り自分の命を削って魔力を捻出する特技でな、ガリガリと寿命が削られる代わりに、通常の数倍から数十倍もの魔力を得る事が出来る、文字通りの“奥の手”ってワケだ」
「す、数十倍……」
テオドールの話に、警備隊の面々は瞬く間に色を失っていく。
「勇者様……」
「勇者様……っ」
切り札を切った怪物達を前に、縋るような、あるいは祈るような眼差しを勇者へと向ける隊員達。本来ならば自分達が彼をモンスターから守らねばならないにもかかわらず、見ている事しか出来ない現状に忸怩たる思いを感じながら……それでも、今は悔しさを押し込めて、ただ事の成り行きへと意識を向け続ける。
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