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(……て、オイ。なんだそれ)
自分で状況の確認をしておいて、よく考えたらコンマ1秒にも満たない時間の中で、何気にとんでもない神業を披露していたらしい勇者に、呆れ半分、驚き半分の視線を向けるテオドール。
「……すぅ……はぁ……」
大勢の驚愕の眼差しと、そして約1名の奇異の視線を浴びながら、勇者は軽く深呼吸しつつ、ロングソードを一薙ぎし、付着した血を飛ばした後に鞘へと納める。
チン、と、小気味のいい音が響くのと同時に、見計らったようなタイミングで斬られたシュタールベーア達が地面に沈んだ。
……数秒後。
「「「……う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
まるで英雄譚の一幕のような戦いを目の当たりにして、先ほどまでの緊張も忘れて色めき立つ警備隊員達。
まさに物語の中の憧れの存在が目の前に顕現したかのような、そんな体験に誰もが顔を紅潮させ、胸躍らせ、「馬鹿野郎! 騒ぐな!! 任務中だろうがァ!!」と隊長から雷を落とされる中。
「さあ皆さん、先を急ぎましょう」
まるで何事も無かったかのように、居住まいを正し、爽やかな笑みを浮かべ、勇者レオンハルトは同行人達を促すのだった。
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