樹海のダンジョン

2/25

89人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
       ☆  「到着しました、勇者様」  樹海行軍中、ふと、テオドールは(つた)に覆われた巨大な切り株を前に足を止めた。  「到着……。あの、ここが目的の『ダンジョン』ですか?」  青い瞳を瞬かせ、レオンハルトはきょろきょろと周囲を見回す。……けれど、視界に映るのは今までと同様、鬱蒼(うっそう)と繁る広葉樹ばかり。どこにもダンジョンの入り口らしき場所は見当たらない。  「……えっとすみません。その、入口が……」  ……分からないのですが、と、若き勇者が続けようとした時だった。  「…………」  ジャキッ……。  無言のまま、不意にテオドールが腰のバスタードソードを引き抜いた。  「っ」  咄嗟(とっさ)の事に、思わずレオンハルトは息を呑み、警備隊員達も目を見開く中、鬼の警備隊長は表情1つ変えずに小さく魔法の呪文を口にした。  「【……焼き払え、魔滅の炎】」  ――直後、2節のスペルに呼応してテオドールのバスタードソードに炎が灯る。  「……まあ、見ていてください」  ぶっきらぼうな言葉と共に、ゆっくりと正面の切り株へと近付く警備隊長。  ほどなくして手で触れられそうな距離にまで近付いた彼は、直径10メトルほどもある蔦だらけの切り株に火を着けた。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加