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☆
「到着しました、勇者様」
樹海行軍中、ふと、テオドールは蔦に覆われた巨大な切り株を前に足を止めた。
「到着……。あの、ここが目的の『ダンジョン』ですか?」
青い瞳を瞬かせ、レオンハルトはきょろきょろと周囲を見回す。……けれど、視界に映るのは今までと同様、鬱蒼と繁る広葉樹ばかり。どこにもダンジョンの入り口らしき場所は見当たらない。
「……えっとすみません。その、入口が……」
……分からないのですが、と、若き勇者が続けようとした時だった。
「…………」
ジャキッ……。
無言のまま、不意にテオドールが腰のバスタードソードを引き抜いた。
「っ」
咄嗟の事に、思わずレオンハルトは息を呑み、警備隊員達も目を見開く中、鬼の警備隊長は表情1つ変えずに小さく魔法の呪文を口にした。
「【……焼き払え、魔滅の炎】」
――直後、2節のスペルに呼応してテオドールのバスタードソードに炎が灯る。
「……まあ、見ていてください」
ぶっきらぼうな言葉と共に、ゆっくりと正面の切り株へと近付く警備隊長。
ほどなくして手で触れられそうな距離にまで近付いた彼は、直径10メトルほどもある蔦だらけの切り株に火を着けた。
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