樹海のダンジョン

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 中には人が2人並んで歩けるかどうかといった幅の、螺旋(らせん)階段状の通路があり、下へ下へと地中深くに向けて伸びていた。  少しの間レオンハルトは巨大な切り株の洞を観察し……やがてテオドールに向き直ると、彼に質問を発した。  「……この通路に最初に気付いたのは、確か10日前でしたね。その時の事ですが、いったいどうやって発見したのですか?」  この場所を訪れる前、テオドール達の(とりで)で受けた簡単な状況説明を思い出しながら、(よど)み無く告げるレオンハルトに、眉一つ動かさないまま鬼の警備隊長は答える。  「それは、10日前の樹海行軍の訓練中、我々はこの場所でグリューンヴォルフの群れに襲われまして……。その時、ヤツらとの立ち回りを演じた際に、偶然私の放った炎系の魔法がこの切り株に命中し、結果、図らずもダンジョンを発見するに至りました」  「……10日前も、炎系の魔法で……?」  テオドールのその言葉に、レオンハルトは(いぶか)しげに眉を潜めた。  「お言葉ですが、テオドールさん。私は今、“幾重にも蔦の絡まった切り株”をあなたが燃やす瞬間を確認しました。……ですが、あなたが10日前にも1度、これを炎系の魔法で燃やしたというのなら、この蔦は、とても短い期間の中であれほどまでに繁茂(はんも)していたことになるのですが……」  流石にそれは不自然では? と、口を突く純粋な疑問に任せ、言葉を続けようとした……その時。
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