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「……っ!」
ふと、レオンハルトは“それ”に気が付いた。
「これは……」
僅かに碧眼を見開いて、改めて視線の先で起きている“現象”を注視するが……やはり、間違いない。
「……燃やされたばかりの蔦が、“もう再生を始めている”……?」
そう。
たった今テオドールによって焼かれ、切り裂かれたばかりの青黒い蔦が、まるで時間を巻き戻すかのごとく、“いっそ不自然なほど急速に”瑞々しさを取り戻していくのだ。
目を丸くするレオンハルトの前で、驚異的な速度で息を吹き返していく蔦は、瞬く間に先ほどまでの姿を取り戻し、ほどなくして再び切り株の洞を覆い隠してしまった。
「いかがですか? 勇者様」
「……驚きました。確かに、この切り株には何か、“特別な力”が働いているようです。それこそ、“ダンジョンの加護”のような」
再生した蔦に手を伸ばし、掴んで引き寄せ、レオンハルトはもう一度見た目や手触り、匂いに至るまで確認するが……。
しかし、何度見ても燃やされたばかりの植物とは到底思えなかった。
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