樹海のダンジョン

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 ほどなくしてレオンハルトは再びテオドールへと向き直ると、改めて目的地までの案内への礼を述べた。  「いえ。それでは、我々はしばしの休息を挟んだ後に(とりで)の方に戻りますが、勇者様は……」  「はい。私はここの調査を終えた後、単独でそちらまで帰還いたします」  「……承知しました」  テオドールは軽く頭を下げると、そのままレオンハルトに(きびす)を返し、隊員達へと向き直った。  疲労の色の滲む部下達へと手早く休息の指示を出す鬼の警備隊長を尻目に、レオンハルトは腰に()いたロングソードを引き抜き、先ほどテオドールがやったように切り株を攻撃。隠し通路への道を開いた。  「…………」  覗き込んだ道の先には、不気味な仄暗(ほのぐら)さが横たわっている。  まるで、自分は招かれざる客であると告げられているかのような、そんな言い知れない薄気味の悪さをひしひしと感じながら……それでも。  「すぅ…………はぁ…………」  細く長い深呼吸と共に、一歩、若き勇者は再び口を開けた未知への扉の向こうへと踏み出したのだった。  ……この時、レオンハルトはまだ知らなかった。  切り株の下の通路。『グリューンメール樹海』の地下深くに広がる『樹海のダンジョン』の先に、今後の彼の運命を大きく狂わせることとなる“元凶”が潜んでいることに。  そして今この瞬間、その“元凶”が口の端を吊り上げ、仄暗い地の底で手招きをしていることなど、若き勇者は知る(よし)もなかった。
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