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頭の片隅で首をもたげる疑問に、けれど、レオンハルトは頭を振って、改めて薄暗い通路の先を見据える。
(……とにかく、もっと情報を集めないと……)
このダンジョンについてもっと深く考察するにしても、今の時点では材料が少なすぎる。
だから、今は黙って前進するしかない。
ひとまずはそう結論づけて、レオンハルトは通路の先、薄闇の向こう側へと歩みを再開したのだった。
(……なんなんだ? このダンジョンは……)
およそ3時間後。
相変わらずの調子でマッピングを続けながらも、いよいよレオンハルトの疑念はこれ以上ないほどに高まっていた。
眉根を寄せ、訝しげな表情で絶えず周囲を警戒し続ける勇者の行く手には……けれど、未だに何も出てこない。
……そう。あまりにも“何も起こらない”のだ。
驚くほど、不自然なほど、不気味なほどに、何も……。
「すぅ……はぁ……」
軽く深呼吸を行った後、レオンハルトはもう何度目とも知れないこのダンジョンに対する推測を行った。
(……この迷宮には、モンスターがいない。迷宮特有の素材やアイテムが見当たらない。対侵入者用の罠やギミックの類いも1つもない……)
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