樹海のダンジョン

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 こんなダンジョンは見たこと無い。  ……いや、“そもそもの話”……。  「…………」  ちらり、レオンハルトは視線を左右の壁へと向ける。  一面苔むしていて、ところどころに青白く発光するキノコが突き出した緑色の壁……。  (まさかとは思うけど……)  一度足を止めつつ、手甲に包まれた右拳に力を溜めた彼は……次の瞬間、その右腕を壁へと叩き付けた。  ズドンッッッ!!  ……それは、ただ引き絞り、打ち出しただけの単純な拳打。しかし、同時に(よわい)17にして既に幾千、幾万の敵を(ほふ)り、屍山血河(しざんけつが)を築き上げ、名声を欲しいままにする勇者の一撃である。  そんなものを食らえば、当然壁は損傷する。  パラパラと苔の付着した土の欠片(かけら)が壁から、そして天井から注ぐ中、レオンハルトは自分が穿(うが)った半径2メトルほどの穴を凝視する。  「…………」  長い睫毛(まつげ)に縁取られた碧眼を皿のようにして、じっと、ただじっと観察を続ける。  10秒……20秒……30秒……。  徐々に時間が経つにつれ、レオンハルトの“疑念”も(ふく)らんでいく。  1分……3分……5分……。  漠然とした(もや)のようだった“疑念”は、時と共に形を成していき……。  ……やがて、レオンハルトの懐中時計が10分が経過した事を告げると同時に、彼の中の“疑念”は“確信”へと変わった。  (あぁ、やっぱりそうか……っ)
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