樹海のダンジョン

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 (あれは……)  (まなじり)を吊り上げながら、突然音も無く現れた怪物に意識を向けるレオンハルト。緊張の糸が張り詰めるほど感覚を研ぎ澄ましていたにもかかわらず、鳴き声が聞こえるまでその存在を認識すらできなかったことに驚きを隠せない様子の彼に対して、しかし、  『キュッ、キュキュウ!』  視線の先のモンスター……。およそ0.5メトルほどの体を揺らしながら、紅い瞳で真っ直ぐにレオンハルトを見つめる、“角の生えた白いウサギ型の怪物”は、そんな勇者の様子などお構いなしに、気の抜けるような可愛らしい鳴き声で威嚇(いかく)(?)を敢行(かんこう)する。  更に、愛らしい動きでもふもふの体を揺さぶりながら、戸惑い気味の相手に近づいたり、かと思えば飛びずさったりを繰り返す白ウサギを、しばらくじっと見つめていたレオンハルトは……やがて、胸の内で小さく呟いた。  (この『アルミラージ』、まさか“テイムモンスター”か……?)  『アルミラージ』というのは、中央大陸の平原地帯に広く分布(ぶんぷ)する角の生えたウサギ型モンスターの通称であり、同時に今まさにレオンハルトの眼前に姿を現したモンスターでもあった。  そして“テイムモンスター”というのは、調教師(テイマー)によって手懐けられたモンスターのこと。  つまり、レオンハルトは、基本的に本能に従って行動するモンスター“らしからぬ動きを見せている”目の前のアルミラージに、何者かの意図を感じたのだ。
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