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「…………」
無言のままレオンハルトは周囲を警戒しつつ、じりじりとアルミラージから距離を取る。彼からすれば、こんな薄気味の悪い場所で、突然現れた明らかに怪しいモンスターなどに構ってやる道理などないのだ。
そう。例えアルミラージの平均戦闘能力が下級下位の最弱クラスだとしても、不用意に突っ込む気になど到底なれようはずもない。
だから、ここは一旦距離を取って、そのまま相手が完全に見失う距離まで逃げるべきだろう。
……そう考えていた、次の瞬間――。
バチバチィ!
突然、アルミラージの足元……ちょうど2本の前足の下から、赤黒い閃光……魔力の光が弾けた。
「っ!」
(これは、魔法!? アルミラージが!?)
“本来魔法など使えないはず”の最弱モンスターの一手に、碧眼を驚愕に見開きながら、レオンハルトはショートソードの柄を握る手に力を込めた。
禍々しい輝きに照らされた一瞬、若き勇者は、例えどんな攻撃魔法が来ても対応できるよう、限界まで神経を研ぎ澄ませ……。
……しかし。数瞬後、警戒を露わにするレオンハルトにアルミラージが行使したのは、またもや相手の予想を裏切る一手だった。
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