樹海のダンジョン

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 ……なんだコイツ。  ごそごそ、もそもそと、自分に攻撃もしないで謎の行動を始めたアルミラージに、一瞬、状況も忘れて呆けてしまうレオンハルト。  だが、次の瞬間、プレートアーマーの内側から白ウサギが器用に前足で取り出した“それ”を見て、レオンハルトの目の色が変わる。  「……お、おい! こら!」  怒声を上げるレオンハルトに、けれど、相手から奪ったもの……“ハンターケース型の懐中時計”を(くわ)えたアルミラージは、『もう用は済んだ』とばかりに彼の胸から飛び降りて、そのまま通路の奥へと駆け出してしまう。  「くそっ!」  軽やかな足音と共に遠ざかって行くモンスターの気配に、焦燥と共に口汚く吐き捨てながら……それでも、すぐさま右足の戒めを破壊したレオンハルトは、急いでアルミラージを追い掛けた。  「おい待て! この野郎!!」  いつになく取り乱しながら、薄闇の奥に見える白い影に怒鳴るレオンハルト。  大抵のモンスターならばその怒号だけで(ひる)ませ、行動不能に(おとしい)れてしまうほどの、そんなとてつもないプレッシャーを浴びせられながら……けれどもアルミラージは止まらない。  下級下位の最弱モンスターながら、唯一の取り柄である『敏捷性(びんしょうせい)』を武器に、ちょこまかと逃げ続ける。
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