樹海のダンジョン

18/25

89人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
 口に(くわ)えた懐中時計を揺らしながら、右に、左に、葉脈のように枝分かれする通路をひた走るそんな相手に、レオンハルトは(ごう)()やしながら……それでも、徐々に、少しずつアルミラージとの距離を詰めていく。  (……10メトル……8メトル……いいぞ。あと、少し……!)  薄く広がる闇の中で、ゆっくり、ゆっくりと、もふもふの白い背中が大きくなる。  あともう少しで、腕が届く……!  (6メトル……4メトル……2メトル……!)  獲物はもう目と鼻の先。  腕を伸ばせば届きそうなほど近くで、アルミラージは荒い呼吸を繰り返している。  ……ちらり。  不意に、前を走る白ウサギが肩越しに振り向いて、レオンハルトの方を(うかが)った。  そして、  「おらぁ!!」  ――その瞬間、バッ! と、勇者は両手を前へと伸ばし、思いっきりアルミラージに飛びかかった。  『キュウ!?』  悲鳴を上げ、紅い瞳を見開く泥棒ウサギ。  しかし、彼が慌てて逃げようとするよりも速く、伸ばされた腕はもふもふの体をがっちりと捕まえて……。  (よし……っ!)  胸の内でガッツポーズを決めながら、ターゲットの捕獲成功に(ほほ)(ほころ)ばせた……。  ……その、直後のことだった。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加