樹海のダンジョン

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 フワッ……。  ――不意に、レオンハルトの体が嫌な“浮遊感”に包まれた。  「えっ……」  思わず声を漏らしながら、慌てて周囲を確認する彼の目に映ったのは、“物凄い速度で上へと流れていく”苔むした壁。  ……一瞬、何が起きたのか分からず、レオンハルトの脳裏に空白が生まれ……しかし、  (……ッ、まさか……っ)  次の瞬間、はっとしてレオンハルトは頭上を仰ぐ。  するとすぐに、見上げた先に“円形に切り取られた天井……いや、先ほどまで白ウサギと追いかけっこを繰り広げていた通路の一部が映り、そしてその通路が加速度的な速さで遠ざかって行く光景”が目に飛び込んで来た。  (ッ、嘘だろ……!?)  はっと息を呑み込みながらも、“どうやら自分はアルミラージを捕獲した直後に通路に空いていた穴に落下した”のだと理解したレオンハルトは、反射的に耐衝撃姿勢を取りつつ、底の(うかが)い知れない穴の奥へと視線を落とした。  目を向けた穴の底は、まるで煮詰めたような色濃い闇が(おり)のように横たわっていて、超人的な身体能力を誇る勇者であるレオンハルトをしても底を見通すことができない。  ごくり。(のど)を鳴らして生唾を呑み込みつつ、しかしどうすることも出来ないまま、若き勇者は白ウサギを抱えながら、深い深い穴の底へと落ちて行くのだった……。
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