樹海のダンジョン

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 にこにこ笑い続けながら、両手を大きく左右に広げる魔族の男。  そんな相手の様子とセリフに、レオンハルトはようやく自分の中で全ての歯車が噛み合ったような感覚を覚え、そして同時に背筋を特大の悪寒が滑り落ちていく気配に、堪らず身震いした。  (あぁ、そうか……! つまり、この場所は……っ)  ほとんどモンスターのいないダンジョン。どこにも見当たらないアイテム。再生しない壁……。  加えて、【錬金術】を使う奇妙なアルミラージと、その角の生えた白ウサギに誘導されて迷い込んだこの場所は、あの魔族の男が自分を“歓迎”する準備を整えていた場所。  つまり、  (この『樹海のダンジョン』は罠だったんだ! 最初から、何もかも、全部……!!)  ……全ては、そう。『王国』の勇者である自分を誘い込み、始末するための布石!  (くそっ!)  胸の内で吐き捨てながら、事ここに至って自分の置かれている状況を把握したレオンハルトは、敵への怒りと自分に対する忸怩(じくじ)たる思いに端正な顔を(ゆが)ませつつも、それと共に澄んだ碧眼(へきがん)に魔王すら(ひる)ませそうな殺気を込めて、改めて魔族の男を睨みつけた。
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