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若き勇者が活躍すればするほど、手柄を上げれば上げるほど、高まっていく称賛の声とは裏腹に、やっかみや反発もまた増えていった。
レオンハルトの台頭を快く思わない者達……それは、かつて王国に仕えていた傭兵崩れのゴロツキや、かねてから平民出身の勇者であるレオンハルトを煙たく思っている一部の貴族。……そして、テオドールのような一部の辺境警備隊員達である。
もちろん、警備隊の全員がテオドールのように年若い勇者に悪感情を抱いている訳ではないが、上司の手前、あまり友好的に接する事も憚られ、結果板挟みのような状態になってしまっているのだ。
「……はぁ」
そっと、レオンハルトは小さくため息をついてから、ちらりと肩越しにテオドールの部下達の様子を一瞥した。
すると、視線に気付いた数名の随伴兵の内、ある者は慌てて視線を逸らし、またある者は引きつった愛想笑いを浮かべた。
……とりあえずレオンハルトも微妙な笑顔でお茶を濁しつつ、再び前を向く。
もう慣れっことはいえ、腫れ物に触るような彼らの対応に若干傷つきつつ、再びため息を漏らした……。
……直後。
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