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先ほどまでとは明らかに異なる真剣な声で、レオンハルトは警備隊長の言葉に反駁しつつ、更に続ける。
「数は……およそ40から50。彼らは私達の周囲を円形に取り囲む形で展開していて……そして、徐々に包囲網を狭めて来ています。気を付けてください、皆さん。来ます」
勇者の発したその言葉に、今まで半信半疑の様子だった警備隊員達の間に緊張が走った。
数時間におよぶ樹海行軍によってだれかけていた彼らだったが……しかし、続けて発せられた「構えてください!」の号令によって、一斉に戦闘体勢に入る。
「チッ……」
(この野郎……)
まだ酒も飲めないような若輩者の分際で、警備隊隊長の自分に意見した上、それだけでは飽き足らず、自分の部下達に指示まで出し始めたレオンハルトに、テオドールは露骨に舌打ちをしつつ……。
……けれど、長年の兵士としての勘に従って、反射的に若き勇者の言葉通りに臨戦態勢に入った……。
――次の瞬間、テオドール達の前後左右、四方八方から、“彼ら”は一斉に飛び出して来た。
『グルルァ!!』
……低く、地の底から響くような咆哮と共に、風を纏って現われたのは、深緑の体毛を持った狼のモンスター達。
『グリューンヴォルフ』の群れだった。
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