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「っ!」
音も、臭いも……何一つ気配という気配を感じさせずに忍び寄って来ていたグリューンヴォルフの群れに、一瞬テオドールの顔に驚きの色が浮かんで……。
……しかし、それだけだった。
「総員! 防御陣系を組め!! 一匹たりともあの薄汚い犬っころを勇者様に近づけんじゃねェぞォ!!」
地を震わせるほどの胴間声で一喝すると同時に、腰に佩いたバスタードソードを一閃。肉薄して来たグリューンヴォルフの1匹を斬り捨てる。
次の瞬間、テオドールの呼び掛けに鬨の声を上げながら、彼の部下達が素早く方円の陣を組み上げた。
「「「おうッ!!!」」」
円形にレオンハルトを取り囲みつつ、同時に自らの体を勇者の盾としながら深緑狼達に応戦を開始した。
『グルオオオオオオオオォォォ!!』
雄黄色の目を血走らせながら、自慢の爪を、牙を、対峙する兵士達に突き立てていくグリューンヴォルフ達。
モンスターとして中級下位の戦闘力を持つ彼らが得意とする戦法は、持ち前の敏捷さで敵を翻弄しつつ、隙を誘発させて全力の体当たりをお見舞いするというものである。
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