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だから「一人だけど一人じゃない」って「人との繋がりや思いを大切にしてくれる子になって欲しい」って思いを込めたのだと……ちょっと照れながら言っていた。
◆ ◆ ◆
『母様、大丈夫だよ。亞里亞は楽しくやっているよ』
俺の視線の先には、妹の元気な姿と……洋風な見た目の男性の姿があった。
残念ながら俺はもう、亞里亞の前に『人間』として現れる事は出来ない。でも、俺はこの姿になっても亞里亞を見守ってきたのだ。
しかし、亞里亞は俺が死んだ後、菊さんも俺を殺してしまったという『罪悪感』からなのか、亞里亞の前から姿を消した。
――結局のところ、亞里亞は何もせずに『一人』になってしまったのだ。
でも、今は『一人』ではない。
それに、俺はあの『男性』を知っているし『他人だけど他人の様にも思えない』と言ってくれた。
『まぁ『レオンさん』と勘違いしてしまうほどだからな……』
彼は多分。『レオンさん』の『親族』なのだろう。
しかし、最初は「彼を知っているからといって『大切な妹』を任せて大丈夫なのだろうか……」と心配にもなった。
だが彼が亞里亞の『目的』を知っても、それを止めてくれた事にとても感謝している。それに……とても楽しそうだ。
『もう少し色々進展しても良さそうだけどな』
なんて思う事があるが、それはまた別の話になる。
俺はトコトコとゆっくりと……亞里亞と洋風の男性『亮一』が営んでいる『骨董店 蜻蛉』へと歩みを進めた。
そして、俺に気がついた亞里亞が「あら、久しぶり」と母様と似たような口調で元気に声をかけられる……。
やっと手に入れた『日常』を俺はこれからも見守ろうと思う。だから母様。もう少しだけ待っていて欲しい。
――そんな思いも込めて、俺は青空にいるであろう母様に向かって「ニャー」と声をかけたのだった。
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