第八章 永遠の支配

3/14
前へ
/106ページ
次へ
 もう一眠りしようと疲れた身体を横たえていると、突然寝室の扉が開かれた。八雲は寝たふりを決め込んで、硬く瞼を閉じる。けれど近付く足音は遠慮もなく枕元に立つと、肩を乱暴に揺すった。 「ほら、餌だぞ」  耳障りな声が思いの外近くで聞こえ、荒い息遣いが耳朶を撫でる。あまりの嫌悪感に身を引いて起き上がると、全裸の吉田が見下ろしていた。既に猛々しい陰茎は首を擡げ、刺激を求めて脈打っている。  余りにもグロテスクな景色から目を逸らし、八雲は深い溜息を吐いた。 「今朝方まで小笠原さんが来ていたのは知っているだろう」 「ああ。だから暫くは来ない」  そう言う事じゃないと言いたいが、このやり取りも何度目か。 「やめてくれ。疲れているんだ」  力なく吐き捨てるも、吉田が引くはずはない。ベッドに上がった男は、八雲を簡単に押し倒すと顔のうえに跨り、汚いもので頬を叩いた。 「しゃぶれよ。早く」  八雲はそろそろと舌を出し、裏筋を舐め上げた。吉田は吐息を漏らし、さらなる快楽を求めて腰を落としてくる。睾丸を揉みしだきながらたまに口に含み、吉田が悦ぶ箇所を攻め立ててやる。 「ああ……最高だ……」  夢見心地の喘ぎ声が余りにも耳触りで、八雲は村上の艶やかな声を思い出す。  地を這うように低く、吐息と絡み合って湿り気を帯び、快楽に耐え兼ねて漏れ出た男の喘ぎとしては最高のものだった。もう一度、あの声に抱かれたい────。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

544人が本棚に入れています
本棚に追加