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もう一眠りしようと疲れた身体を横たえていると、突然寝室の扉が開かれた。八雲は寝たふりを決め込んで、硬く瞼を閉じる。けれど近付く足音は遠慮もなく枕元に立つと、肩を乱暴に揺すった。
「ほら、餌だぞ」
耳障りな声が思いの外近くで聞こえ、荒い息遣いが耳朶を撫でる。あまりの嫌悪感に身を引いて起き上がると、全裸の吉田が見下ろしていた。既に猛々しい陰茎は首を擡げ、刺激を求めて脈打っている。
余りにもグロテスクな景色から目を逸らし、八雲は深い溜息を吐いた。
「今朝方まで小笠原さんが来ていたのは知っているだろう」
「ああ。だから暫くは来ない」
そう言う事じゃないと言いたいが、このやり取りも何度目か。
「やめてくれ。疲れているんだ」
力なく吐き捨てるも、吉田が引くはずはない。ベッドに上がった男は、八雲を簡単に押し倒すと顔のうえに跨り、汚いもので頬を叩いた。
「しゃぶれよ。早く」
八雲はそろそろと舌を出し、裏筋を舐め上げた。吉田は吐息を漏らし、さらなる快楽を求めて腰を落としてくる。睾丸を揉みしだきながらたまに口に含み、吉田が悦ぶ箇所を攻め立ててやる。
「ああ……最高だ……」
夢見心地の喘ぎ声が余りにも耳触りで、八雲は村上の艶やかな声を思い出す。
地を這うように低く、吐息と絡み合って湿り気を帯び、快楽に耐え兼ねて漏れ出た男の喘ぎとしては最高のものだった。もう一度、あの声に抱かれたい────。
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