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家を出た時は真っ青な空だったのに、何故か僕が本屋から出た瞬間ポツポツと雨が降り出し、気がつけばザザ降りになっていた。 カバンにはさっき買ったばかりの気になってい文庫本が一冊。 どうにか濡らさないようにと肩掛けカバンの奥底に入れたはいいが、カバン自体が布製なので文庫本が濡れてしまうのも時間の問題かもしれない。 雨の中、駆け足でちょうどよくあったバス停の屋根のある部分へと避難する。 家まではさほど遠くはないが、雨がやまなければバスに乗って家の途中まで乗ればいいかと単純な気持ちだった。 それに、さっき買ったばかりの文庫本を読みながら待つのも悪くないと思った事もある。 やっと雨から開放された僕はおもむろにカバンの中に手をやり奥底へとしまった文庫本をもぞもぞと取り出し、雨宿りをしながら読書をしようとホッと息をつく。 さぁ、いざここからスタートだと思った瞬間、バチャバチャと水音を立てながら僕じゃない誰かが僕のいたバス停へと飛び込んできたのだ。 正直言って僕は憤慨したね。だって、ここは僕がせっかく見つけたサンクチュアリなのに、いきなり邪魔が入るなんておかしいじゃないか。 まだ見つけてちょっとしか経ってない僕の聖域に、見知らぬ誰かが入ってくるなんて腹ただしい以外の言葉が見つからないよ。 しかし、この僕の気持ちなんて一向に気づかず侵入者は僕の背後にやってきた。 振り返るのも何だか癪だったから僕は知らんぷりで文庫本のページを、素知らぬフリでめくり読み始める。
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