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空が泣いていた。
ポツリポツリと地面を濡らすその雫は、やがてザァーザァーと大粒の雫へと変わった。大小様々な丸を地面に描いたその雫は重なりあい、然程時間をかけずに地面を覆い隠した。
「ねぇおばあちゃん、どうしてお空が泣いてるの? 」
「そうねぇ、神様が泣いてるのかしらねぇ」
幼い女の子と老齢の女性が仲良く手を繋ぎながらゆっくりと歩いていた。薄い桃色に白の水玉が散らばり、縁にはフリルがぐるりと1周回る小さな傘を左手にコテンと首を傾げる少女。右手の先には白髪の老婦人。
「神さまが泣いてるの? 悲しいの? 」
「そうねぇ、嬉しいのかもしれないわねぇ」
傘の桃色よりも少し濃い桃色の合羽を揺らしながら少女は問いを重ねる。キラキラとどんぐり眼(マナコ)を輝かせながら好奇心を隠さず不思議そうに老婦人を見上げる。少し困ったように皺の寄った目尻を下げてふんわりと微笑む。
「うれしくて泣くの? 」
「そうよ、嬉しくても涙が出るのよ」
合羽と同じ桃色の長靴でポチャンと水溜まりを揺らして少女はわからない、と呟く。老婦人を見上げていたどんぐり眼を伏せて、しゅんと肩を落とす。老婦人はまぁまぁ、と微笑んでぎゅっと左手に少しだけ力を込める。
そろそろと見上げてくるどんぐり眼を優しい微笑みで受け止めて老婦人は雨が落ちてくる空を見上げる。釣られるように少女も空へと視線を向ける。
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