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幸運と悪運
『だぁぁぁぁぁっ!?くっそなんだってんだよ!』
ここはよくある田舎町のちょっとした小道、ここに住む青年の夏のある日のお話である。
走る青年、この青年名はオグ、悪運だけは誰にも負けない高校生。
追いかけるのは四足歩行で鬼のような顔をして走る“犬”である。
尻尾に痛々しい足跡を付けられ怒っているようだ。
だが踏んだのは逃げまどう青年その人ではない、彼はたまたま逃げる少女の隣を通りかかっただけなのだが、何故だかその犬は少女ではなく青年を追いかける。
『あの女ぜってー許さねぇ!くっそがぁぁぁぁ!…ッ!?』
理不尽な現実に怒りをぶつけながら叫んでいると唐突に青年に押し寄せるのは浮遊感、地に足がつかず落下するその感覚である。
その刹那聞こえたのは水の音、ザバァァン、という波立てる音と、ゴボゴボと浮き上がる自分の呼吸音、そして犬がキャンキャンと吠えるその鳴き声。
今日に限って川が深い、昨日の雨は傘が無くなってびしょ濡れになったというのにまだ俺を苦しめるのかとオグは思う。
ここで俺は溺れ死ぬ運命かと、オグはそっと目を閉じて沈んで行った。
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