幸運と悪運

11/13
前へ
/13ページ
次へ
ピンポーン、とチャイムを鳴らすと、無言でドアが開けられる、ラキは目を合わせようとしないが、『中に入って』とだけ言うので、部屋へと上がった。 部屋で座ってからも無言の時間が続く、いても立ってもいられなくなりオグから話を切り出した 『呼んだようって、なんだよ』 するとラキは涙目になりながら、口を開いた 『…私はね、神様を信じてる、よ、でもね、貴方は、神様が嫌いで、そんな言葉が、嫌い、みたいだから、さ』 まぁ、正直言わんとすることは誰にでもわかっただろう 『『もう会うのはやめよう』…ってか?』 『…っうん』 『だったら、別に連絡取らなきゃよかったんじゃねーの』 『…嫌だ、よ、最後に話したかったんだもん、君と、もう一度だけ、話したかったんだもん…』 ポロポロと涙がこぼれる。 そんなラキを眺めて、オグは思わず綺麗だな、なんて思ってしまう。 『…そうかよ、悪いね、こんな性格で』 『んーん、いいの、悪いのは私だから、でもね、一つだけ聞いてね』 そう言うとラキは、涙を拭いて、オグの目をしっかりと見た 『私はあなたと出会えたこと、神様のくれた運命だと思ってるよ、短い間だったけど、こんな楽しくお話出来たこと、素敵な人と、出会えたこと…幸せだったと、思ってるよ…』 『ふーん、で?』 冷たかっただろう、自分でもわかる返事の仕方。 嫌味ったらしい、嫌な返事。 『だから、私は、忘れないからね、オグくんのこと、忘れない、から』 『そっか』 痛いのは、胸、誰の?オグ、お前だろう、なぁ、また普通に話そうって、俺が神って言葉を聞くこと、我慢するだけでそれだけで楽しい時間が過ごせるのに。 『じゃあね?オグくん、迷惑かけて、ごめんなさい』 オグは黙って立ち上がる。 泣きじゃくる彼女を目の前に、やっぱり自分の運は最悪だと、こんなことなら出会わなきゃよかったと嘆いた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加