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家族との会話なんてほとんどなくて、私の日常生活になど誰も興味が無いのだ。
けれど、死神さんは違った。
「ほう、100点か。凄いじゃないか」
初めて私を褒めてくれた。
兄ではなく私を。
嬉しかった。
何でもない話を、彼は聞いてくれたのだ。
今まで誰も見向きもしなかった私の言葉に、彼は耳を傾けてくれた。
けれど、そんな幸せな時間は長くは続かなかった。
「斬るの?」
「あぁ」
やんややんや言う家族の真ん中に祖父が眠り、それを心底つまらなそうに見つめて、死神さんが刀を抜いた。
私は部屋の隅で、そんな死神さんの横顔を眺めていた。
死神さんが祖父の魂を斬ると、夕日に魂が乱反射して舞い降り、春風に消える。
「やっぱり、綺麗だね」
私がそう言うと、死神さんが困ったような顔をした。
「ねぇ、また会える?」
「...さぁな」
「また来てよ」
「お前、家族に死んでほしいのか?」
流石にそこまでは思っていない。
しかし咄嗟に私は否定の言葉が出なかった。
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