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繰り返される逢瀬。お互いのひとときの憩いであった。
ある日、家の名に恥じると籠屋通いを禁じられる忠匡。二人の間は引き裂かれた。
身を偽り、最後の逢瀬で忠匡は言う「共に逃げましょう」と。
それに対し桔梗は「いけません」と断った。
桔梗も武家の出である。武士としての忠匡の身を案じてのことだとわかった。そして、それが本心でないことも。
しかし、細く輝く月夜に籠屋が火事になる。
忠匡がしたことではないが、この隙に桔梗を連れ出せる。そう思った。
燃え盛る炎の中、うずくまっている桔梗を見つけた。
「火が……火が……」と、恐怖に顔をひきつらせる桔梗を抱きかかえ外に出た。
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