1314人が本棚に入れています
本棚に追加
一思いに番号をタッチする。
躊躇しなかった訳ではない。
だから 少しの勢いと勇気を出して。
電話から三度目の呼び出し音のあと 待っていたようなしっかりした もしもし と言う声が聞こえた。
『谷口さんですか?』
『はい』
『有馬です。今よろしいでしょうか?』
『大丈夫です』
『経理まで来て頂いたみたいで...仕事...ですか?』
『いえ....申し訳ありません。私用、です』
『....何か御用でしょうか?』
『出来ればお会いしてお話したいんです。今からお会いできませんか?』
『今?今はちょっと...』
麻生君を置いて出ていけないし 今は急用でなければ優先させたい事案にならない。
『そうですか...』
『電話だと出来ない話ですか?』
そう切り出すと谷口さんは堰を切ったように話出した。
内容は
麻生君が今回うちの会社の監査責任者を降りたのは 私のせいだと。
『上から今は 監査する側として有馬さんに関わるな って言われたのに 今大切な時なんで譲れない今回の事案から外して頂いて結構です って』
『....それで地方に?』
『そうです。あれだけの人なのに。アメリカの公認会計士の資格もとって真っ直ぐ一番を歩いている人だったのに。地方が降格って訳じゃないんです。でも今回は明らかに...。
なぜ麻生さんが担当外れるまで待ってあげないんですか!私なら...私なら何年でも待ってあげれます。何であなたみたいに麻生さんを分かってあげない人が麻生さんの彼女なんですか...!』
頭が真っ白で何も考えられない。
私は彼の邪魔しか出来ていなかったのだろうか...?
『いつもいつも...!
あなたなんていなければ上手くいってたんです!
あなたなんていなければ....!』
最初のコメントを投稿しよう!