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麻生君は後ろから回した手で私の顎を掴んで自分の方へ向け あふれるようなやさしさを含んだ瞳で私に語りかけるように言った。
『君にこんな事言う必要ないけど
待てなかったのは俺の方。
もう離れてられないから。
仕事と京香を比べる事なんて出来るもんじゃない。
京香といる為なら俺は望んで転職でも何でもする。
だいたい赤の他人の君に京香が 居なければ って言われるのは..許せないね』
最後の言葉は凄く冷たい声色だった。
『君に京香ををおとしめる資格があるのか?仕事での君は評価している。でもプライベートまで踏み込んだ事は許せない。ましてや京香に言った根拠のない悪言は言語道断だ。先輩の婚約者にした仕打ちとしてコンプライアンスにも充分違反する事ぐらい君にも分かるだろう』
婚約者…。
『あ 麻生さん..』
『君が謝罪もなく改めもしないならこっちにも考えがある』
頭がついていかない。でも仕事では上手くいっている様相の二人が私の事で大事に発展しようとしている。
言われた事が嘘なら許せないけど事実を違った方向から見た事で偏った認識を持ってしまったなんてどこかで聞いた話。
そりゃぁ谷底に突き落とされた気分だった。
だとしても 永年間違った認識で母や事実を見ていた自分が何を言える?
彼女も大の大人だし 庇う気はない。
だからといって私から彼女を追い詰める気にはならなかった。
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